SHINHWA「Kiss Me Like That」の個人的考察

SHINHWAのお兄さんたちが20周年のミニアルバムを発表。全体的にクオリティが高くて、なぜフルアルバムしなかったの?!?!と思うけれど、おそらく凝り性の彼らのことだから時間切れだったのではないかと…。10月初めには20周年記念コンサートが決まってるし、その前にはアルバム出して、放送活動もして集客に結び付けないと、頼みのコンサート収益が見込めないからね。

 

という意味からもおそらく気合いが入っていると思われる今回のアルバムのリード曲「Kiss Me Like That」、これがすごくいい!

 

スウェーデンの作曲家デュオ、Caesar & Louiの曲。Caesar & LouiはSMをはじめとするいろんなK-POPグループに曲を提供していて、これまでは、EDMフレーバーを巻き散らかした強いリズムにゴリゴリのポップなメロディを乗せるのが彼らの作風と思っていたのに。めっちゃアコースティックなサウンドで攻めてきたので超びっくり。

 

アコースティングギターの単純で短いフレーズのループの上に、シンプルなメロディだけど艶っぽいボーカルが乗って、妙に色っぽいグルーヴを生み出している。さらに三者三様のラップがシンプルがゆえに単純になりがちな構成に華やかさを加味していて、鮮やか。ボーカルチームとラップチームのそれぞれの良さをきちんと魅せていて、6人で一つのグループであることをよく示している仕上がり。

 

構成としてはクラシックの名曲、ラヴェルの「ボレロ」みたいなんだけど、このラヴェルの「ボレロ」みたい、というのは大きなポイントだと思う。

 

ボレロ」は短いメロディをずっと反復する、ともすると現代のミニマルテクノともいえるような曲で、スネアとベースにずっと同じリズムをループさせながら、AメロとBメロの二つしかないメロディをさまざまな楽器がつないでいく。最初は音の小さな木管楽器から始まり、くり返しのなかで鳴っている楽器も増えていき、最後はクレッシェンドでのぼりつめる。

 

シンプルだけどエキサイティングなバレエ曲。つまり、ダンスミュージックなわけで、「ボレロ」をクラブミュージックの元祖と評する人もいるくらい。

 

「Kiss Me Like That」も、同じリズムに、Aメロ、Bメロ、サビにブリッジぐらいの要素しかなくて、しかもAメロはリズムを刻み続けるフレーズと同じ。ラップの後ろに入ってくるブラスのフレーズもAメロとコード進行が同じ。すごくシンプルな構成でできている。

 

リズム+メロディ(+ハーモニー)という音楽の基本的な要素だけで、エキサイティングなダンスミュージックを作ることができる。そういうラヴェルの試みが脈々と受け継がれていると感じれられる曲を、韓国の最長寿アイドルといわれるSHINHWAのお兄さんたちがタイトル曲に採用したというのは、意味のあることのように(勝手に)思う。

 

「Kiss Me Like That」では、くり返されるリズムが耳に残り続けるフレーズでもあり、これがポップスとして必要なキャッチーさという要素にもなっていて、ヒット曲となりうる中毒性がある。このフレーズは1フレーズのみ録音して、ループしていると思われ、素材はアコースティックだけど、曲作りのテクニックはクラブミュージックの定番というのも面白い。

 

Caesar & Louiがどこまで狙っているのか、「ボレロ」を意識しているのかしないか、それは私にはわからないけれど、彼らから提示された音楽好きの好奇心をくすぐる仕掛けにワクワクできたことが嬉しい。なにより、これを勝負曲にしたSHINHWAの音楽性の高さにも敬意を表したいなと思う。